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2018.11.19 正確な温度測定に向けた通風筒のメリットとデメリット

こんにちは。みどりクラウドの研究開発を担当しているA.Iです。

生産者の皆さんであれば少なからず、正確な温度の測定とはどうするか考えたことがあるかと思います。真剣に考えれば考えるほど、温度の測定は難しすぎると感じますよね。みどりクラウドにも温度の項目はあり、温湿度センサー・温度センサーと二つも備えていますし、当然重視しているセンサーになります。

「正しく気温を測る」ために「温度の校正」「温度の測定原理」なども含めて考えていきたいと思います。

 

温度の校正とは

「正しい温度」というのは何を持って正しいとしているのでしょうか。水の0℃、100℃であれば正確な値を出しやすく非常に評価しやすいポイントです。例えば、水は0℃では固体と液体が共存状態となり氷だけになるか水だけになるかしない限り0℃のまま、というところですね。なので、水と氷が共存していて十分に時間が経過したものは正確に0℃、と言えるからです。100℃のところも同様ですね。沸騰状態の水は全て蒸気にならない限り100℃のままです。

ただし、より精確にとか検定を受ける場合などは別です。

実は上の現象は「1気圧の条件」「純粋な水で混ざり物が溶けていない」という条件付きになるのです。山の上など高いところにいけば圧力は恒常的に下がりますし、天気予報を見ると「高気圧が張り出して~~~」というのや、「発達中の熱帯低気圧が~~~」などと耳にすることが多いと思います。このように日々変動しているわけですね。

「1気圧の条件」というところについては、図1に示していますが、気圧が下がれば凝固点は上がり、沸点は下がる、ということなのです。「これでは水と氷が共存した状況でも0℃かどうかわからない!」となるわけなので、完璧に精確な値に合わせたい場合には三重点(図1の緑)という氷・水・水蒸気が共存するところが使われるわけです。

しかしここまできてあれですが・・・、三重点とは0.994 atmも圧力を下げてようやく0.0098℃変わる程度です。高気圧でもせいぜい1060hPa(=1.05atm程度)程度であり、低気圧では観測史上最低で910hPa(= 0.9atm程度)となると、現時点で農業向けの場合は気圧の影響はほぼ考えなくて良い程度の圧力になります。

しかし、「100℃の沸点で校正しよう!」と考えている場合は要注意です。

図1は三重点を目立たせる書き方をしていますが、凝固点と三重点は実際にはほぼ温度的に差はないものですが、逆に沸点と三重点は非常に大きい変化率になっています。つまり、気圧が変化すると沸点が大きく変化してしまうのです。例えば低気圧で960hPaとなると、沸点はおよそ99℃程度、標高1000mくらいでは気圧は900hPa程度まで下がり、沸点は97℃あたりまで落ちてきます。富士山頂では気圧は600~700hPa(= 0.6~0.7atm)となるので、沸点は90℃を下回る程度まで下がってきます。図2のようなイメージです。ここまで差が激しいと、沸点で校正してしまうと、さすがにズレてしまうのがわかると思います。ということで、温度センサーを校正するなら氷水でやりましょう、ということですね。

 

温度の測定原理

さて、温度はどうやって測定されているか、皆さんご存知でしょうか。

アルコール温度計や水銀温度計は熱の膨張を利用して暖かいと膨張するから線が上のほうに伸び、冷たくなると収縮するので線が下のほうに降りてくるのを利用しているわけです。

利点としてはやはり使いやすい、という点に尽きますね。ただ、目視による誤差、液切れ、経年劣化、ガラス露出部の影響などなどあるので、一般的には±1~2℃程度の誤差をもっていいます。

電気的に計る方法としては金属の抵抗値が温度によって変化するものや、温度によって起電力が発生するので、発生した電力を測定する方法等があります。こちらの場合は金属の材質によっては高価な代わりに性能が非常に良いものから、安価で精度がそこまで良くないものまで色々とあります。

温度によって起電力が発生するセンサーとしては、「熱電対」というものがあります。こちらは素材によっては1000℃までも測定できるような広い温度範囲と応答が早いことが大きな特徴です。

抵抗値の変化から温度を測定する代表的なものとしては、「白金測温抵抗体」という温度センサーがあります。「白金」言っているので想像どおり高価ですが、その代わりに誤差±0.1℃や中には±0.01℃という優秀なセンサーもあります。もちろんその他の箇所の誤差が乗ってしまうので、ここを達成するには全てのパーツの選定が必要ですが。

みどりクラウドでは温度、温湿度センサーともに抵抗値から温度を測定する方法を利用していますが、白金測温抵抗体のより安価なサーミスタや半導体のセンサーを使っています。白金測温抵抗体ほどの高精度なものではありませんが、±1.0℃は達成可能なくらいの性能です。

 

ここまで考えてより高精度に測定できるセンサーの組み合わせができたとしても、そもそも測定の仕方が悪ければ精度の良いセンサーを使っていても誤差が大きく乗ってきてしまいます。

正確な気温を測定するためには、その他の外乱の影響を除去しなければなりません。具体的には①「直射日光」、②「空気の澱み」、③「地面からの輻射熱」、④「周辺の物体からの熱伝導」、⑤「水滴の蒸発」です。

そこで皆さんが良く使われるのが「通風筒」と呼ばれる機器かと思います。通風筒とは、読んで字のごとく風が通る筒です。通風筒は温度を正確に測るための工夫が全て盛り込まれているのですが、それなりに価格が高くなってしまいます。

そこで当社では、フル装備の通風筒を備えなくともできるだけ良い精度で測定可能な温湿度センサーを開発いたしました。

 

通風筒の原理

まず、通風筒がどういう原理なのかについてですね。

通風等にはファンで強制的に送風する「強制通風筒」(図3)と百葉箱と同じ原理で自然の風に任せる「自然通風筒」(図4)の二種類があります。

強制通風筒は名前のとおりファンを使って強制的に風を流す構造になっています。風の流れとしては、センサーを通った後にファンの周辺を通過し、外管と内管の二重管構造をとり、内管のさらに内側にセンサーが付いています。

非常に単純な構造に見えるのですが、実は注意点が多くあります。

①「直射日光」への対策としては二重管にしているため、仮に外管が加熱されたとしても内管が影響を抑えてくれます。単管の場合は熱伝導が抑えきれず誤差の要因になってしまうというわけです。

②強制通風筒であるため、当然「空気の澱み」は解消されます。ただし、風量が大きすぎる場合や管が細すぎると雨の場合に水滴を吸い込んでしまうことや、内圧が下がってしまうことが問題となります。適切な風量のファンと管径を選ばなければならないというわけです。ファンを利用していることで大きな課題としてはファンから発生する熱をセンサーが検知してしまわないことです。そのため、下の吸気口から入ってきた風がセンサーに触れ、その後にファンを通過する構造をとります。ファンの後ろから排気されますが、ここが熱を持ってしまっているので、再度吸気口から進入しないようすることも注意です。お手製の強制通風筒となると断熱膨張による冷却効果も注意しないとなりません。断熱膨張というのは急激に体積が増える環境に空気が移動すると、周りとの熱の交換が起きないため代わりに空気自体が冷えてしまうという効果です。簡単に試してみたい方は口を細くして強く息を吹いて見てください。熱い食べ物を冷ますときに良くやりますね。この冷たい空気を送り込む方法が断熱膨張による冷却効果なのです。つまり、「強制通風筒でできるだけ温度を下げるように作ろう!」と考えて作ってしまうと、いつの間にか断熱膨張で冷却してしまっていることもあるのです。

③「地面からの輻射熱」というのは地球放射と呼ばれる目に見えない光が地表面から出ていて、その光がセンサーに当たると暖めてしまうという効果(通風筒壁面からもありますが)です。そのため、センサー自体ができるだけ通風筒から見えなくすることが重要です。かといって、風の流れが悪くなると澱みや渦ができてしまうので、逆効果になる場合もあります。

④周辺物からの熱伝導の回避は、距離を離すか魔法瓶のように真空で断熱するしかありません。なので、二重管構造で十分に距離をとれるようにしてできるだけ影響を受けない形になっています。

⑤水滴の蒸発というのはプールから外に出たときに風が吹くと寒く感じるのと同じ現象です。水は蒸発するときに液体から気体へと形を変えるわけですが、このときに周りから熱を奪います。そのため、センサー部に水滴がついていたままになっており、水滴が蒸発してしまうと、センサーから熱を奪う、つまり温度を下げる効果が出てしまうわけです。対策としては風量を抑えて雨を巻き込まないようにするということ、通風筒を地面から垂直に立て、横から雨が当たらない工夫が必要になってきます。さらに、設置の仕方と風量によっては地面付近の空気を吸い込んでしまうので、高めに出す可能性もあります。特に夜間は地温が下がりにくいので、「強制通風筒で測定した気温のほうが高い!」ということもあると思います。

さて、自然通風筒についてですが強制通風筒との大きな差はファンがなくなることです。図4の概要図からわかるとおり、完全に自然に任せた風の流れになります。

そのため、②の「空気の澱み」ができやすくなる代わりに、ファンからの熱をもらう心配がなくなるわけです。微風があるような日では問題が少ないのですが、やはり無風時に誤差がでやすいことが問題になります。メリットとしては、「電力が不要」、「安価」というところです。

 

みどりボックス用の温湿度センサー

①「直射日光」と③「輻射熱」への対応策が重要ですが良く考えて見ます。炎天下の中に金属製品を置いておくと触れないほど熱くなっている経験は良くあると思います。これはまさに直射日光を金属が吸収してしまっていることや、熱伝導で伝わってくることから起きています。しかし、純粋なアルミニウムは太陽光を反射してくれるのです。図5には太陽光とアルミニウムの光吸収スペクトルを示していますが、実はアルミニウムはほとんど光を吸収しないのです。しかし、日中においてある金属製品は純粋な金属というわけではないからです。例えば、アルミニウムの場合には表面を白アルマイト・黒アルマイトといったものでコーティングすることや、表面を何かしら薬品で処理したものが光を吸収し、熱伝導率の良い金属に伝わることは十分考えられます。

例えばみどりボックス用の温湿度センサーは錆び防止のために白アルマイトで処理しています。見た目は普通のアルミニウムと変わらないということは、可視光は反射しているということですが、実は赤外光の特性がまったく違います。大雑把に赤外光の光吸収率を比べると、

アルミニウム研磨面 0.05

白アルマイト処理面 0.80

黒アルマイト処理面 0.95

 

となるわけです。こうなると、赤外光にとっては実は白アルマイトも黒と大して変わらないということです。なので、これは赤外光をたっぷり吸収してしまって、結局のところ本体の温度が上がってしまいます。

このため、みどりクラウド用の温湿度センサーは白アルマイトの厚みも薄くできるように、と考えて作っています。アルマイトを無くしてしまうと、さすがに劣化が早くなるのでどちらを取るか、ですね。

 

さて、ここまで色々考えてきましたが、実際の結果を見てみなければ、ということでいくつかのパターンでみどりボックス用の温湿度センサーで試験です。

 

①傘なし、②短い傘で覆う、③長い傘で覆う、④強制通風筒を設置。それぞれ地面からの高さは1.5mとしています。

予想では測定された気温は、「傘なし>短い傘>長い傘>強制通風筒」と考えていましたが、図6のような結果となりました。

短い傘と長い傘ではほぼ同等、強制通風筒との差が意外にも大きいというところです。

これを解析すると、まず傘なしと傘有りの差というのは直射日光の影響です。この差があまり無い(最大で1℃程度)、ということはアルミ表面が可視光を反射しているからと推測できます。しかし、傘有りと強制通風筒でまだまだ差があります(最大で3℃程度)。この差は地上からの輻射熱ですね。さらに予想外と感じていのは、18時以降に強制通風筒とその他が逆転(最大1℃程度)してしまっているところです。地温が下がりにくい、と考えると風速が強く他のセンサーよりやや下の空気を測定してしまっている可能性を意味しています。加えて排熱の影響も出ていそうです。(強制通風筒の導入もまだまだ工夫しないといけません・・・。)

ここでは、「傘有りと無しでは余り差がない」という点が重要です。目的としては傘の不要なセンサーを作るというところが達成できれば御の字で、今回の結果からすると直射日光の影響は十分軽減できている様子です。あとは輻射熱ですが、これが難しいのです・・・。アスファルトの地面に設置したセンサーは影響を受けやすいので、何とかしなければ。

いずれ「カンタンお手製自然通風筒の作り方!」など紹介していきたいと思います!

お手製作成時の注意点はすぐに挙げられますが、「じゃあどんな通風筒を作ればいいんだ!」というところまで話せればと思います。

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