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2018.12.20 みどりボックスPRO無線化キット開発までのみちのり

こんにちは。みどりクラウドの研究開発を担当しているA.Iです。
今回新しく発売したみどりボックス用のセンサー無線化キットについて、誕生までの話をしたいと思います。

無線モジュールにセンサーを取り付けるだけ、と思われるかもしれませんが、実は悩みどころのポイントがたくさんあるのです。
大きく分けると以下の3点ですね。

  1. 1.無線モジュールの規格はどれを利用するか。
  2. 2.今後追加するセンサー全てを対応できるのか。
  3. 3.電池はどのくらい持つか。

このあたりを踏まえながら、開発までの話をしていきたいと思います。

無線を触り始めたのは実はみどりボックスが販売開始したばかりの2016年の3月頃からです。

  • 「センサーを無線化するとどういう利点があるのか」
  • 「無線規格が多数あるが農業向けの規格はどれなのか」
  • 「その他に課題を洗い出しする」

といったところを目的として、まずは使えそうな無線モジュールに手をつけ始めたというところが発端です。

無線モジュールの規格・種類

無線モジュールといっても、この頃から有名どころとしては多くあり、Wi-Fiや3G通信はもちろんのこと、EnOcean・Wi-SUN・Zigbee・Bluetooth Low Energyなど920MHz帯・2.4GHz帯の無線モジュールなどいわゆるLow Power Wide Area(LPWA)と呼ばれるものが複数あります。
それぞれ特徴があり、大きいポイントとしては低消費電力・免許不要の無線通信というところです。具体的には下記のようなものがあります。

EnOcean

- 低消費電力の無線モジュールに環境発電を組み合わせ電池不要
- 通信距離100m程度
- 温湿度センサーはもちろんのこと、人感センサーや電流センサーなど多数実績有り
- 主にホーム向けやビル管理マネジメントなどに利用
- 電波の周波数は国により異なり、日本では920MHz帯を利用
(逆にヨーロッパ専用のEnOcean製品は日本で使えないものもあったりします)
EnOcean製品

Wi-SUN

- 日本発の無線規格のセンサー
- 電池消費量が少ないうえに1キロ程度の長距離通信が可能
- 電力量計自動検針システムなどのスマートメーターで利用
- 電波の周波数は920MHz帯を利用
- マルチホップにより安定した通信網を構築し、より長距離で通信可能としたWi-SUN Field Area Networkなども市場に出回り始めている
Wi-SUN製品

Zigbee

- 2000年代頭からスタートした無線規格で実績も豊富
- 電波の周波数は920MHz帯、2.4GHz帯など、いくつかの帯域を利用
- 入手性も良く、比較的簡単に使えるということでマイコンなどと組み合わせ使いやすいようにキット化された製品なども販売されている
zigbee製品

Bluetooth Low Energy

- Bluetoothのversion4.0から利用可能になり、低消費電力でBluetoothが利用可能
- 転送距離は数メートルから数十メートル程度(Bluetooth5.0からは長距離通信も可能)
- データ転送速度が速い
- 周波数は2.4GHz帯
- 接続用のモジュールもカンタンに入手可能
Bluetooth SIG

LoRa

- 低消費電力、数キロ~数十キロに及ぶ超長距離通信も可能な点が特徴的
- 周波数は920MHz帯
- データ通信量が小さい
- LoRaWANは別物で今回はプライベートLoRaとして利用
(LoRaが同じように使われていますが、LoRaの利用の仕方として二地点間のみで通信するプライベートLoRaと、LoRa付きのデバイスをLoRa基地局へデータを送信して利用するLoRaWANの違いがあります。)
LoRa Alliance

通信距離試験

  • 直線距離で数百メートルの比較的広い農場で利用する
  • → 500m程度は安定して通信可能

  • 施設園芸の場合は若干の壁を突き抜けるか、迂回しやすい電波が良い
  • → ビニルハウス、ガラスハウスの壁を何枚か挟んでも問題なし

  • 繁忙期には植物体が湿気、水分を含んだ壁として働くため、水に強い電波が好ましい
  • → 植物が繁茂しても問題なし

今回リストアップしている無線モジュールは920MHz帯と2.4GHz帯の無線通信ですが、920MHz帯の無線通信は水分で電波強度が減衰しにくいこと、障害物など迂回しやすい点が特徴です。
そうすると920MHz帯を利用しているEnOcean、Wi-SUN、Zigbee、LoRaあたりが有力となってきます。

さらに長距離を安定させて通信する場合、一対一通信で500メートル以上を通信する方法か、短距離をマルチホップさせて親機まで繋ぐ方法が考えられます。LoRaであれば一対一で1000メートル以上飛びますし、Wi-SUN FANやZigbeeであればマルチホップも可能です。
しかし、マルチホップの場合は複数台を設置することが前提となってしまうため、例えば1台しか導入しない方であれば本体周辺しか届かなくなってしまいます。さらに、電池の消費もあがってしまうことも欠点です。
ということで、LoRaがよさそうと思いつつもZigbee、LoRa、EnOceanの試験をしています。

Zigbeeモジュールの利用

図2第一号として作成したものが図2に載せている温度センサーを3つ取り付けた無線機です。無線モジュールはZigbeeを利用し、単体ではもちろん電池の消費は少ないのですが、問題点としてはセンサーが電池を食いすぎてしまう、というところです。
そこで、温度センサー自体の選定・周辺に使われる抵抗・測定時間の調整などを進め、極限まで電池を消費しない設計&電池寿命計算をしながら作ってみた結果、1分に1度計測して、単三乾電池4本で3年持つ試算のセンサーができあがりました。
2016年の頭に作成しましたが、2018年10月頃でもまだ動いております。
飛距離としてはおよそ200メートル程度ですが、圃場内を全域カバーできるわけではなく、もう少し距離が欲しいというところです。
しかし、これで大きな課題が浮き彫りになりました。
モジュールが電池を食わないものを使っても、センサーが電池を食ってしまったら何の意味も無い・・・。

EnOceanセンサー試験

EnOceanのセンサーはArmine社の温湿度センサーを試してみました。こちらの利点はプロトコルが完全に決まっているので、とにかく扱いやすいところですね。
センサー買ってきて、USB受信機を親機に使い、飛んでくる電文を解析するだけ、と大変お手軽です。
さらにエナジーハーベストからの電源供給もあるので、バッテリーの問題もクリアしやすいですね。しかし、飛距離が足りない・・・。

LoRaモジュールの利用

もう一つはLoRaのセンサーです。
飛距離試験は今までよりはるかに飛ぶはずなので、広範囲の試験を実施しました。
一つはこちらの記事になります。
当社ニュースリリース


1500メートルはまったく問題なく飛びますし、市販されているモジュールも扱いやすいと感じました。しかし、まだまだモジュール単価が高いのがネックですね。
LoRaモジュールを利用して作成したものが図3の二号機です。LoRaモジュールに温湿度センサーを取り付けたカンタンなものです。飛距離試験のみのテストと考えていたので、バッテリーの持ちを考えずに作ったところ、3日でバッテリー切れをする試作機となりました。アンテナも付いているように見えますが、実は見た目だけです。
二号機を利用して、条件を変更しながら実験を繰り返し、飛距離を延ばすための試験に割り切って進めました。
飛距離的には問題ない点と、バッテリーの持ちを向上させるためにはセンサー側の処理や通信頻度に手を入れるべきと考え、LoRaモジュールで開発を進めることとしました。

対応センサーの選定

センサーが電池を消費してしまうという問題があるため、利用可能なセンサーを限定すべきか、解決方法があるのか、というところがなかなか大きな問題です。
電池の持ちを考える上で基準となるのは、

  • 生産者の年間サイクル
  • 無線で利用する価値があるセンシング項目
  • 電力消費の少ないセンサー

このあたりと考えてみます。

年間サイクル
生産者の年間サイクルは、作物にもよるところはありますが、10ヶ月程度の栽培期間と2ヶ月程度の端境期があります。そうすると、必ずしも12ヶ月間は持たなくとも良い可能性があります。

無線の価値
多点測定すべき項目となると、やはり温度・湿度、土壌センサーです。温度を測定すべきポイントとしては、ハウス内の平均気温・作物の生長点付近・培地温度などです。また、日当たり次第では複数点を計測する必要があります。
土壌の水分度や養液濃度については、大気の撹拌と比較して圧倒的に遅い時定数となるため、水分ムラ・濃度ムラがでやすいものとなります。そのため、場所によって生育が大きく違う体験はされている人が多いかと思います。

センサーの消費電力
ここは完全にみどりボックス側の勝手な話になるところはありますが、温度・温湿度・日射量はそもそも電力消費が少なく、無線化しやすいと言えます。

上記の条件から考えると、温湿度と温度センサーを乾電池で10ヶ月連続稼働させることが目標となります。乾電池といっても極端な話では単一型乾電池たくさん付けて・・・といった形を取れば簡単なわけですが、利便性との兼ね合いですね。
ということで使いやすい単三型乾電池を4本利用という点も条件として考えていこうと思います。

利便性

まずはみどりクラウドのコンセプトにもあるように、「使いやすい・カンタン」という点を大前提としています。
しかし、出荷時の作業量低減や、利用者側でカンタンに設定可能とすることができれば手離れがよくなるので、そのあたりも考えつつシステムを設計していきます。

最終的に出来上がったのがこちら図4の右側のものです。
両方のボタンを押すだけで30秒以内にはペアリング可能です。
さらに、最後の完成間近で追加した機能が、オプションアダプタになります。
一つのハウスにみどりボックスPROを設置し、他のハウスは無線キットで測定。その場合、電源が取れる場合が多いと思います。電源が取れるということは、最も懸念していたセンサーの電力消費が解消、測定頻度の向上が見込めるわけです。
ということで、オプションアダプタ利用時は送信間隔2分とし、CO2センサーや土壌センサーなども利用可能!となりました。

実環境で試験をすべきと考え、実際のトマト生産者様の敷地内で試験を実施しました。イメージ的には図5のような圃場で行った試験になります。みどりボックスPRO親機と無線子機をそれぞれ端のほうに設置したところ、見通しが取れている場合よりは電波強度は落ちておりましたが、特に大きな問題はなく測定可能という上々の結果となりました。実際は敷地の中心部に本体を置いてもらえれば、全ハウスもカバー可能となりますね。

みどりボックスPROを1台メインのハウスに設置し、各ハウスには無線キット3台それぞれに温湿度センサー・CO2センサー・土壌複合センサーを接続、なんていうのもできますね。

電源の取れなかった場所へのセンサーの設置・本体から離れていてセンサーが設置できなかった箇所・配線するのが難しかった箇所など、無線化キットで設置が容易になったので、是非是非ご利用ください!

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