2022年3月31日
みどりクラウドを運営する株式会社セラクは、2020年4月から2年間にかけて農林水産省スマート農業実証プロジェクトに参加し、アスパラガス栽培へのスマート農業技術の活用に取り組んでまいりました。その成果物として、「スマート農業を用いたアスパラガス栽培マニュアル」が完成致しましたので、公開いたします。
スマート農業実証プロジェクトの取り組み内容
当実証事業は、スマート農業技術を導入することによる農業経営への効果を明らかにすることを目的として行われているものです。本プロジェクトにおいては、みどりクラウドによる環境モニタリングや定点カメラなどを用いることで、アスパラガスの栽培にとって重要な環境管理、及び、水管理の可視化と体系化、及び、AIを用いた選別を補助する機器、アシストスーツによる労働負荷の軽減や作業時間の短縮に取り組み、その効果を実証農家の経営データを用いて明らかにいたしました。
また、島原農業高等学校の生徒が本プロジェクトを通じて作成した栽培マニュアルを用いて、スマート農業を用いたアスパラガス栽培に取り組みました。こうした取り組みを通じて、将来の担い手の育成にも貢献しています。


スマート農業の導入による効果
本プロジェクトの取り組みにおいて、「みどりクラウド」を用いて環境モニタリングを行うことで、栽培環境を可視化し、生産者はデータに基づいた判断が行えるようになりました。その結果、温度管理の精度が向上し、土壌水分の水準の向上が見受けられました。

- アスパラガス栽培における上限気温である35℃を基準として高温積算温度(℃・分)を算出したところ、2020年と2021年で比較すると、温度環境が改善していることが見受けられる
また、スマート農業を導入した圃場(実証区)と慣行農法の圃場(慣行区)での収穫量を比較したところ、3軒の生産者のうち2軒において実証区の収穫量が統計的に有意に高く、その差は最大で47%となりました。
アスパラガスの収穫量は、過去の栽培状況や株の状況を強く受けることから、その全てがスマート農業による効果であるとは断定できませんが、データ管理によって栽培環境を適正に管理できるようになり、収穫量の増加に繋がった可能性があると考えています。

スマート農業を用いたアスパラガス栽培マニュアルについて
本実証プロジェクトでは、スマート農業技術によって収集されたデータを用いて、栽培管理技術研究活動に取り組んでまいりました。「スマート農業を用いたアスパラガス栽培マニュアル」は、この活動の中で議論した成果を取りまとめたものになります。特に新規就農者の方がスマート農業技術を用いることで早期に安定的な収穫を実現することを主な目的としています。アスパラガスの栽培において重要であるとされている環境管理、水管理を定量的に評価し、その値を適正化するために必要な方法についてまとめました。
[スマート農業を用いたアスパラガス栽培マニュアル]ダウンロード(PDF 14.1MB)
マニュアルの前提条件
品種 ウェルカム
株年数 2年目以降
地域 長崎県南島原市
モニタリング機器 みどりクラウド(株式会社セラク)
マニュアル概要
- このマニュアルについて
- スマート農業を活用する準備
- アスパラガス年間栽培カレンダーと環境・水管理
- アスパラガスにおける環境制御指標
- 夏季の栽培管理
- 秋季の栽培管理
- 春芽収穫時期の栽培管理
- 付録 もっと詳しく理解するために
- 付録 実証事業の取り組み成果
成果の発表について
本プロジェクトの成果については、2021年11月5日に南島原市で開催されたアスパラガスにおけるスマート農業の活動発表会にて発表を行いました。その模様は、YouTubeチャンネル「みどりクラウドチャンネル」にて公開しています。
配信URL: https://youtu.be/RWGLdy0IlrA
謝辞
本マニュアルは、農林水産省「スマート農業技術の開発・実証プロジェクト(課題番号:施2H04 課題名:スマート農業技術の活用によるアスパラガス生産体系の確立 」(事業主体:国立研究開発法人農業・食品産業技術総合研究 機構)の支援により作成されました。
また、本マニュアルの作成にあたり、九州大学 尾崎行生教授、A-noker株式会社安東浩太郎様、地元篤農家の多比良 豊徳様から助言をいただきました。
この場を借りてお礼申し上げます。