神奈川県藤沢の地で、トマト、キュウリをはじめ、稲作、ブロッコリーなどを手がける、渋谷ファーム様。2015年より、春トマトを主としたハウス栽培において、「みどりクラウド」を導入、それまで感覚や経験に頼っていた作業が、数値によって“見える化”したことで、より効果的な栽培を試行錯誤できるようになったそうです。
神奈川県農業技術センターの試験圃場に選定されたのを機に、タブレットやスマホで、土の温度や水分量、湿度、日照、CO2などを確認・管理できる技術があるので、使ってみないかと声をかけられたのがきっかけです。それまでは自分の経験や感覚、父の長年の経験知をベースに、その時々の気候状況などに応じて感覚的に判断して作業を行っていましたが、導入後は、温度と成長の関係が具体的な数値としてわかるので、安心して作業できるようになりました。
2年目以降、前年の数値をもとに試行錯誤できるようになりました。例えば、温度のかけ方。午前中は温めて、午後は冷やして温度差をつける。最初に温度を上げると、植物の中の水の流れがよくなり、実を大きくすることができます。経験的にわかっていたものの、「みどりクラウド」では温度・湿度の具体的な数値が表示されるので、コントロールしやすくなります。経験知が数字として明確になったことで、育成管理がしやすくなりました。水分についても、これまでは、トマトにあまり水分を与えず、ストレスをかけると糖度が上がり、美味しく育つというのが常識とされてきました。しかし、成長期のトマトは水分量を上げることで甘くなり、ある程度、実も大きくするのに効果的なことが明らかになりました。最近はトマトの種苗会社も、“水をあげてください”というようになっています。トマトの平均糖度は約5〜6%ですが、「みどりクラウド」を導入したことで、データが毎年蓄積されています。狙った数値に持っていくために、水分量や気温をどう調整すればいいか、数値を参考にしながら、調整できるようになりました。
今まで農業日誌は手書きで記録していたので、ついつい忘れて、思い出しながら書くということもあり、苦労していました。「みどりノート」は、タブレットのタッチパネルに基本的な作業項目が入っていて、種まきや定植の時期、農薬記録、収穫時期・収穫量の記録などを選んで入力するだけ。とても簡単です。基本的な入力は、スマホでもできるので、収穫の開始時間と収穫量だけは圃場で記録し、作業後、家に戻ってから、タブレットで詳細を入力します。過去の記録がいつでも見られるので、農協に提出する記録簿を作成する際も、必要な項目だけ書き写せばいいので、とても楽になりました。
農薬についても、薬品名を打ち込めば、農林水産省(※FAMIC)のデータとリンクし、作物の種類に応じた希釈の倍率や散布回数など、適正な基準がすぐにわかります。栽培に対するアドバイスとしても役立つし、農薬を撒いた日・種類・量など、農薬の履歴を記録できるので、農協に提出する際にも便利です。
安全に対しては、JGAPの基準以上に気を配っている自信はあります。でも、JGAPを取得すれば、自分が育てた野菜が安心・安全で美味しいとアピールできて、より多くの人に届けることができる。消費者の方にとって、わかりやすい目印として、JGAPを取得しておくといいなと思っています。日々の記録から必要とされる提出書類が自動で作成できる「みどりノート」があれば、なんとかなりそうなので、まずは取得に向けた準備として、今、勉強しているところです。
これまで経験や勘に頼っていたことが、数値によって見える化したことで、どのタイミングとポイントで手をかければいいのかがわかるようになりました。作業効率を高める上でも、とても効果的だと思います。自分自身にとっての課題が見えてくるので、さらに工夫を重ねていきたいと思います。今後は、父が管理している棟にも導入し、その栽培データを取っておきたいと考えています。父の方が経験豊富で、実際に育てているトマトもいいものができます。大きくて、甘くて美味しい。長年培ってきた父の経験知を、「みどりクラウド」を使って栽培データとして見える化し、引き継いでいきたい。父に追いつくためにも、「みどりクラウド」は、自分にとって大きな力になると思います。